交通事故で請求できるロードバイク(自転車)の損害賠償額・減価償却

保険会社が提示した損害賠償額を確認する

 この記事では、保険会社が提示した賠償金額が妥当かどうか判断するための、適正なロードバイクの時価の計算方法について説明します。

 最初に、保険会社から損害賠償額の明細が送られくるので内容を確認しましょう。そして提示された金額を見て多分このように感じる人が多いと思います。

「金額が安すぎる!」「修理費に全然足りない!」「この金額では買い替えできない!」

 これは保険会社が何の根拠も無く安い金額を提示したのではありません。ロードバイクの損害額が「時価」で計算されているからです。簡単に言うと、新品価格から使用年数分の価値をマイナスした額=「時価」で計算されています。

 「時価」で計算されている理由は、人の物を壊してしまった時は新品価格ではなく「時価」を上限として賠償すれば良いと法律で決められているからです。

※購入価格が高額でないクロスバイクやシティーサイクル(ママチャリ)であれば全額支払ってもらえることもあります。

ロードバイク本体の損害額(時価)の計算方法

 ロードバイクは車両(軽車両)ですので、自動車が交通事故で損傷した時の損害額(時価)を計算するのと同じ方法で行うのが一般的です。新品価格から経過年数による価値減少分(減価償却)を差し引いた額が損害額となります。

1.まず最初に「時価」を計算する

 ロードバイクの時価は次の計算式で求めます。

 時価=新品価格×(耐用年数経過年数)×耐用年数

例)2年3か月前に30万円で購入したロードバイク(耐用年数は5年とする)

時価=30万円×(60か月27か月)×60か月=16万5千円

・減価償却は定額法、1年=12か月に換算

・新品価格=購入価格が不明な場合はカタログ掲載希望小売価格で差し支えない

 ただし、どれだけ年数が経過していても時価は0円にはならず新品価格の1割が残存価値として認められるため、計算結果が新品価格の1割を下回った場合は、時価=新品価格×10%(上記例では3万円)になります。

 なお、自転車の耐用年数は公的な基準が存在しませんので、近年の裁判でスポーツ自転車の耐用年数を5年と認めた判例があるため「5年」に設定しています。示談交渉は保険会社との話し合いになるため、相手方が耐用年数を5年とすることを認めない可能性も十分あります。

「耐用年数は、一般の自転車の耐用年数の5年として時価額を算定するのが相当である」(大阪地裁・平成24年4月19日)

「原告自転車がスポーツバイクであり、負荷のかかる使用が予定されている一方、用途に応じた耐久性を備えている」ことから、耐用年数を5年として時価を算定(京都地裁・平成27年7月29日)

「自転車の法定耐用年数は2年」は不当です

 「自転車の耐用年数は2年と決まっているので、減価償却した結果これだけしかお支払いできません」と保険会社から言われたという事例はよく見られます。しかしそのまま信じるのは正しくありません。

 自転車の耐用年数は2年という基準は確かに存在します(国税庁 耐用年数表 車両・運搬具の耐用年数)。ただし、この基準は国税庁が事業者向けに示した企業会計上の基準です。個人を対象とした損害賠償の基準として無条件に適用することはできず、被害者の同意無く一方的に適用することはできないとされています。

「中古車の時価を課税または企業会計上の減価償却の方法である定率法または定額法によって定めることは、加害者および被害者がこれによることに異議がない等の特段の事由がない限り、許されない」(最高裁・昭和49年4月15日)

 2.時価と修理費見積金額を比較する

 次に上記で計算した時価と、ショップに作成してもらった修理見積額を比較して、より低い方の金額が相手方に請求できる「損害額」となります。

 例1)修理費(全損)30万円・時価16万5千円

 30万円>16万5千円 損害額=16万5千円

 例2)修理費(一部破損)5万円・時価16万5千円

 5万円<16万5千円 損害額=5万円

※例1のように修理費が時価を上回ってしまう事を「経済的全損」と言います。

ロードバイク本体以外の損害賠償額(時価)の計算方法

 本体と同じく新品価格から使用年数分の価値減少分(減価償却)を差し引いた額が時価となります。

 車両本体以外は基本的に耐用年数が短い消耗品扱いになり、多くは耐用年数1~2年程度で計算されるため時価額は低額になります。破損したジャージ、レーパンといったウェア類は残存価値である1割程度で計算されるかと思います。

自分で計算した時価と保険会社が提示した査定額を比較する

 自分でロードバイクその他の物品の損害額が計算できたら、保険会社が提示した時価・賠償金額と比較しましょう。保険会社が妥当な金額を提示したか、あるいは最低限の金額しか提示していないかがある程度分かります。

例(購入価格30万円、購入後2年3か月経過)

 保険会社の提示:耐用年数3年の場合 時価7万5千円

  30万円×(36-27)÷36=7万5千円

 保険会社の提示:耐用年数2年の場合 時価3万円

  30万円×(24-27)÷24<0 残存価値10%=3万円

 先に耐用年数5年で計算した結果とどれだけ開きがあるか、保険会社が自転車の耐用年数を何年で見ているかが比較のポイントです。

賠償金(修理費)の増額を認めてもらう方法は?

 残念ながら、増額の余地はあまり無いと言わざるを得ません。

 時価は先に説明した計算式を使ってほぼ機械的に計算されるため、金額を増やす余地は非常に限られています。「新品価格」「経過年数」は変えることができないので、唯一交渉の余地があるのは「耐用年数」だけです。

 保険会社がロードバイクの耐用年数を2年で提示した場合に「企業会計の基準を個人の賠償基準として適用するのは不当である」「スポーツ自転車の耐用年数は5年だ」と主張するほかありません。

 場合によっては長年大切にしてきたロードバイクに購入価格の半額にも満たない額が提示されることもあり、到底納得できないかもしれませんが、法的には加害者が損害賠償をする義務があるのは時価が上限です。示談交渉の進め方によっては保険会社の判断で上乗せされる可能性が無いとは言えませんが、被害者が時価以上の金額を請求することは不当な請求になってしまいます。

要注意:時価の全額を賠償金として受け取った場合、ロードバイクを相手方に引き渡さなければならない場合があります

 加害者が壊してしまった物品の時価の全額を損害賠償として支払った場合、代わりに加害者はその壊した物品の所有権を取得するという法律があります(民法第422条)。例えば保険会社が交通事故で全損した自動車の賠償金を支払う代わりに、保険会社は壊れた自動車を回収しスクラップとして売却するということが行われます。

 ロードバイクも物品ですのでこの法律が適用されます。ロードバイクが全損になり時価の全額の支払いを受けた場合、賠償金と引き換えに加害者(保険会社)にロードバイクの所有権が移ります。破損したロードバイクの市場価値は皆無かつ処分費用がかかるので、わざわざ引き取るような事は滅多に無いはずですが、もし引き渡しを求められた場合は法律上拒否することはできませんので注意してください。

この法律が適用されるのは過失割合が0:10で、時価の全額を受け取った場合に限ります。過失割合が1:9やそれ以下である場合など、一部でも自己負担額が生じている場合は「時価の全額」を受け取ったことにはならないため適用されません。

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