弁護士も知らない新戦術~人身傷害条項第9条第2項作戦~

 その日は仕事を定時で切り上げ、電車に乗って名古屋の裁判所近くの雑居ビルにある鳥羽弁護士事務所を訪れます。時刻は夜の7時です。女性の事務員に応接間に通されて待っていると、高そうなスーツを来た証券会社の営業マンのような人が現れます。鳥羽弁護士です。頭髪を整髪料できっちり固めて高そうな腕時計も着けていて、多分お金が大好きなタイプのやり手弁護士なのだろうなと勝手に想像してみたりします。

 事故の状況について簡単に確認された後、コピーしておいた自動車保険の約款の「人身傷害条項」について説明し鳥羽弁護士に渡します。目を通して2分少々経過したところで、

「確かに仰る通りですね」

 あっさり理解してもらえました。地元で法律相談をした弁護士と全く同じ反応です。交通事故が得意であることを看板に掲げている弁護士であっても、こうした手法を知らないという事もあるのかなと思いましたが、理解さえしてもらえれば大した問題でもないのでとりあえずスルーで様子を見ることにします。

 今までの相手方との交渉の状況を説明し、加害者から謝罪が一切無いどころか治療費も全く払ってもらえないので、裁判を起こして保険金の増額分でロードバイクの修理費だけでも取り戻したいことを訴えます。また、交通事故の怪我で腰の違和感が続いていること、手術をした左手首の動く範囲が完全に回復していないので、後遺障害の認定の可能性について尋ねてたところ、

「腰の症状は14級の認定がまず取れるでしょう」

 と断言しました。治療経過や検査資料も見ないで断言するということは、過去の経験から後遺障害等級が認められる可能性が高いケースであることを知っているということです。さすが交通事故特化の看板を掲げている弁護士だけのことはあるなと感心します。交通事故による後遺障害の専門知識は完璧です。しかし鳥羽弁護士の次の言葉を聞いて驚かされます。

「14級に認定された場合の慰謝料ですが、300万円前後になると思います。」

「ファッ!?」

 驚きました。泣き寝入り寸前でせめてロードバイクの買い替え費用だけでも捻出したい思っていた所へ、いきなりAnchorRL8の10台分の資金が確保できると言われれば誰でも驚きます。決してお金が全てではないのですが、加害者の謝罪すら無く、被害者が一方的に交通事故の被害で苦しむことを考えると、被害の穴埋めには被害者がある程度のお金を得ることは必要だと思います。そしてこの金額は被害の回復に十分過ぎる金額です。凄い金額を聞いて少し心拍数が上がったところへ、弁護士が追い打ちをかけます。

「もし手首の可動域制限が残って12級に認定されれば、1000万円になります。」

「ファーwwwwwwwwwwww」

 なんというか、想像すらできない数字に対して心の中で大量の草を生やす以外何もできません。話がうますぎて何かの詐欺に遭っているかのようです。動機が激しくなり変な汗も出てきて心拍数は無酸素運動ゾーン4突入。まさに「お金に目が眩む」という言葉そのまんまです。

 なんとか冷静である振りを装いつつ、鳥羽弁護士に依頼を受けてもらえるかどうか確認すると、受けますとの返事を貰えました。弁護士が受任するということは、勝てる見込みが非常に高いということを意味しています。事件解決までの道筋がほぼ確実なものとなった瞬間です。

 ただ受任については、人身傷害条項の適用可否について保険会社に確認して正式に回答があった後にしたいとのことで、保険会社の回答を待って後日あらためて契約することになりました。そのほか、病院で腰の部分のMRI(磁気共鳴画像)検査を受けるよう指示されます。後遺障害の申請をする際に必要だそうです。ともあれ1時間程度で話は終わり一旦帰宅します。

 帰りの電車の中で今後の事など色々考えます。鳥羽弁護士のお金の話はただ驚くばかりで、怪我についてお金を貰えるのは大変有り難い事ですが、そこまで大きな被害だとはいまいち実感できないのが正直なところです。そして手首の治療が順調に進んで元の状態に戻り、きちんとロードバイクに乗れるようになる事の方が最も重要です。ただ少なくとも14級認定の可能性は高く、ロードバイク10台分もの慰謝料を払ってもらえるとすれば、加害者がどんな不誠実な態度であろうと「まあ仕方ないか」と気持ちを整理することができるかなと思います。

 それでもやるべきことはきっちりとカタを付けなければなりません。思えば交通事故の後に加害者から「ぶつかってきたのはお前だ」と酷い対応をされ悔しい思いをして約4か月。反撃に必要な要素はほぼ全て揃い、後は弁護士さんを通じ加害者の黄中に宣戦布告をするだけとなりました。頭の中に少し前に流行ったドラマ「半沢直樹」の決め台詞とテーマ曲のBGMが流れます。

「やられたらやり返す。倍返しだ!」

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